小さなプレゼント
小さい、小さいプレゼント。
この手に収まる程の、プレゼント。
白い袋にピンクのリボンという、至って簡素な包装。
受け取ってもらえるかなぁ・・・。
『あ、あのさ・・・今日、一緒に帰れる?』
『・・・別にいいけど』
今朝交わした約束通り、私たちは一緒に帰っている。
でも、隣を歩く彼はなんの疑問も持たずにすたすたと行ってしまう。
渡したいものは、しっかり用意できてるのに。
ポケットに入れたまま、ずっと握っている。
でも、渡す勇気がなくて。
どうしても切り出せなくて。
時間は待ってくれずに、彼と一緒に沈黙の中を進んでしまう。
その時だった。
「なぁ・・・」
「え?」
突然沈黙を破ったのは彼だった。
「ど、どうしたの?」
「いや・・・なんか話でもあるのかと思って」
チャンス・・・!
そう思って口を開く。
「あの・・・えっと・・・」
チャンスなのに、私は言葉を飲み込んでしまった。
「なんにも、ないよ」
「・・・そっか」
馬鹿なことをしたなぁ・・・
その後悔だけが、頭にあった。
再来した沈黙の中しばらく歩き、分かれ道になった。
私はまっすぐ。彼はこの角を曲がる。
「じゃあ、また明日」
聞きたくなかった、別れの言葉。
これでもう、終ってしまう。
「あ、あの!」
「ん?」
勇気がいることは、百も承知。
勇気がないことも、知っている。
でも、ここでやらなきゃ始まる前に終ってしまう。
そう思うと、自然と口が動いた気がした。
「これ・・・今日、誕生日でしょ?」
両手で持ったプレゼントは、余計に小さく見えた。
でも、彼はすんなり受け取って、一言。
「お、サンキュー」
きれいな笑顔だった。
彼は嬉しそうにポケットに入れた。
そして手を振りながら、角を曲がった。
私は安心したのか、目頭が熱くなった。
でも、頑張ってそれを止めたまま、彼が曲がった角を見ていた。
こんな簡単なことだったのかと、肩を落とした。
それと同時に、顔が赤くなった。
そしてふと、思った。
プレゼントをもらったのは、私の方かもしれないなぁ・・・ と。
+あとがき+
『Butterfly』の霧柚 玲様への捧げ物です。
・・・意味不ですね((今更かよ。
でも伝えたいことはオブラートに包んでしっかり入れましたので!
頑張って溶かして読み取ってくださいませ(^^;)
相互リンク、ありがとうございました!
2007/10/04 優香
+絵・小説ともに、霧柚 玲様のみお持ち帰り可です+
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