「あの、」





言いかけて、言葉に詰まる。



彼女は店番をしているんだ、たぶん。
本を読む少女を前に、僕は目線はずしつつ頭をかいた。

この店は商店街の一角にあり、いつでも閉まっていて、営業しているのは見た事が無い。
今日、初めて見た。雑貨店・・・だろうか?
窓ガラスは曇っていて、何かがある、ということしか分からない。
そして彼女は、その店のドアの前にイスを置いて、本を読んでいた。

仕方なく、再び勇気を持って口を開き、大きな声で呼んだ。





「・・・あの!」





ようやく気付いた様で、彼女は動じた様子も無く顔を上げた。
僕はほっと安堵の息を漏らした。





「・・・何か?」

「え・・・」





『何か』は無いだろう、『何か』は。
僕は再び彼女を見る。





「通して欲しいんですけど」





彼女は立ち上がり、僕をまじまじと見つめた。
瞳は・・・青、というのか?いや、薄めの紺か?
髪も同じ色で、肩より数センチ上辺りまでのショートヘア。
立ち上がると思ったより低くて、顔立ちからも幼さが感じられる。





「だめ」





彼女はそう言って、また本を読み出した。
だめ・・・?なんでだよ!





「どうして・・・店、やってるんじゃないんですか?」





彼女は今度は立ち上がりもしなかった。
ただ、僕を見上げるように顔を上げて、





「オーナーの指示。
 まだ、開店してないの」





と言った。なんだ、まだだったのか。
オーナー・・・やっぱり見た事ない人なんだろうな。
彼女はごそごそとポケットをあさった後、続けた。





「これ」





突きつけられたのは、チラシ。どうやらこの店のものの様だ。
青っぽい字で書いてあった。・・・彼女の髪と一緒だな。





「開店したら、来て」





彼女はそう言って、本を読み始めた。

僕は、そのチラシにもう一度目を落とした。
ここに居ても仕方がない・・・また、来るか。
そう思った僕は踵を返して、歩き出した。

一瞬、誰かの視線を感じたけれど・・・気のせいだろう。
僕は開店が楽しみだった。
彼女のことも、少し気になっていた。










今更なのだが、あの時素直に帰れたのは何故だろう?
本当に今更だが、もう一度考える時があったなら、きっとまだそこにいただろう。
これも、既に決まっていた運命だったのだろうか。

この、ずっとずっと後に分かったこと
それは・・・





















この不思議なお店の開店は、
物語の始まりを告げる合図だった、ってこと。




















+あとがき+
うわ意味不だーでもなんか気に入った!その内続編とかやっちゃうかもだねー(笑)
最初は思いっきりギャグっぽくしようと思ったんですけど、
なんかなーと思ってちょっと真面目に。
タイトルのセンスはスルーの方向で!((本当だよ
ちなみに、出てきた娘の髪とかは、一応『瑠璃色』って設定です。
紹介するタイミング逃しました(汗)やっぱり続編必y(ry


2007/12/18 優香


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