「ねぇ、」




くいくいっと、小さな力で服の裾を引っ張られた。
力の主は、これまた小さい、女の子。
僕は迷子かなんかだと思って、「どうしたの」と声をかけようとした。
でも、彼女の方が早かった。





「来て」





再びくいくいっと服を引っ張られた。今度は、指も指していた。
どうやらここは店の前だったらしく、彼女はその店を指差していた。
買い物帰りだった僕は、出来れば早く帰りたかったので彼女の手をそっと離した。





「また今度でいいかな?」
「だめ」





彼女は無表情な声で言った。
どうやら、彼女はこの店の看板娘の様だ。
でもその割には、他の人々には目を留めようともしない。
僕を、なんとか店に入れようとしている様だ。
僕はこの店に何の関係もないし、よく知らない。
なんたって、存在に気付いたのもここ最近・・・



いや、違う。
もう少し前・・・僕は彼女に会った。
それは、この店がまだ開店する前のこと。
僕は気になって入ろうとしたけど、結局入れなかった。
その時に、彼女にチラシを貰ったんだっけ・・・。





「入って」




彼女が、再び言った。



ちらりと、店の中を見た。
曇ったガラスの中は・・・何かが、動いていた。
部屋の中は薄暗いのでよく見えないが、とりあえず生き物。
目を凝らして見てみると、何かを運んでいる様だ。
だとしたら、人・・・?とりあえず誰かいるみたいだ。



何故かすごく気になった。
自分でもびっくりする程、この店に入ろうと思った。





「どうぞ」





彼女がドアを開けた。
唯一の光は、このドアからもれる外の光だけ。
僕は、その部屋に一歩入った。





「えーっとぉ・・・お客さんですかぁ?」





妙に間延びした声が、部屋に響いた。



急にバタンッと扉が閉まった。僕は思わず後ろを向いた。
先程まで居た彼女の姿はなく、室内は再び闇を取り戻した。





「フフン・・・お客さんですかぁ」





コツン、コツンと足音が近づいてきた。





「・・・ちょっと早過ぎましたねぇ、来るの」
「え・・・?」





「ルリにはちゃんと言ったハズだったんですけどぉ・・・
 仕方ありませんねぇ、ちょっとお休み下さいねぇ」





ルリ・・・?彼女のことか・・・?
ボッとランタンの火がついた。ちょうど僕の目の前にそれがあった。
持っているのは・・・僕より少し大きな男の人のようだった。
暗闇から、すっと顔が出てきた。





「!」
「おやすみなさい」





その言葉とともに、僕の視界を手がさえぎった。
ゴンッと鈍い音がした。きっとそれは、僕が倒れた音。
痛いとかそんなのは全然感じなかったけれど、睡魔が襲ってきた。
抵抗なんて出来ずに、僕の意識は闇にうもれた。










不思議だ。
よく分からないことばっかりなのに、すごく落ち着いてる。
あの人は誰?あの店には何がある?彼女は一体・・・
好奇心、というのか?
脳裏をよぎるのはそんなものばかりだった。





















+あとがき+
えと、一応短編ですが「strange shop」の続きとしても読める、というこの小説。
今更ながら、タイトルは逆の方がよかったんじゃないかな、なんて。
まぁ今から変えると混乱するので変えませんが。

話がまだ途中な感じですね。モチロンまた続編をっ!(ぉぃ


2007/04/01 優香


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